なぜ英語ができないのに発音が良い人がいるのか?
世の中には珍しい才能をお持ちの方もいるようで、英語は全くできないのになぜか話させてみると発音が異常に良かったりする。このように発音がキレイだということは、英語を(音として)正しく聞き取る才能(?)があるということで、英語を勉強し始めれば通常では考えられないスピードで英語を習得していきます。そして、そんな才能をもった人は音楽業界に多いというのも特に不思議な話ではありません。音楽の道を志し、幼い頃から世界中の音楽に触れ努力することで耳が鍛えられる。どのように鍛えられるか、科学的なお話はできませんが、勉強していないのに英語の発音が綺麗な人はきまって耳が良いです。そういう耳のいい人には、日本人が不得意とする英語ならではの音が聞き取れたりする。そして歌を歌う人は運が良ければ音楽を勉強する過程で喉の使い方を学んでいたりする。そうなると、英語を聞いて真似てみると他の人に比べてキレイにモノマネできるようになるのです。例えば、英語ができないのに発音だけは完璧だと言われる方で昔から有名なのは「美空ひばり」さん。美空ひばりさんのジャズを聞いた時にはたまげました。もちろん練習はしたでしょうが、当時の時代性も考えてあれだけ綺麗な英語を話す人は日本でも少ないと思います。さてさて、そんなこんなで今日紹介するのは美空ひばりさん、ではなく、「発音がキレイなアーティスト」という条件で調べた時に出て来たバンド「the band apart」のみなさんです。前振りが長過ぎましたがいってみましょう・・・。
the band apartとは?
このサイトに訪れる方でthe band apartに詳しい方が少ないという判断で紹介していきますが、ファンの間では「バンアパ」と呼ばれ絶大な人気があります。メンバーはボーカル&ギターの荒井岳史さん、ギターの川崎亘一さん、ベース&コーラスの原昌和さん、ドラムスの木暮栄一さんからなる4ピースバンド。僕がこのバンドを知ったのは一昨年の夏。その頃からインストバンドにハマっていた僕は、詞よりサウンド優先で音楽を聞いていたためthe band apartは一気にハマりました。もちろん彼らの音楽はしっかり歌詞もあるのですが、なんというかずっと聞いていたくなる曲調なのです。メンバーは中学生の頃からヘヴィメタルのコピーバンドをやっておりテクニックが半端ない。海外でもそのスキルは認められていて、海外バンドとも仲が良いです。ベース&コーラスの原さんがおっしゃっいたのですが、メタルはすでに音楽ではないと。ギターの速弾きも早すぎるのでスキルは磨かれたが、心地よい音ではない。そんな経緯もあって、メロコア、フュージョン、ソウル、ジャズ、ボサノヴァなど、多くのジャンルの音楽を独自に消化、吸収したサウンドが持ち味となっております。全員34,5歳のおっちゃんばかりですが、むちゃくちゃいい音を出します。(笑)さて、the band apartのもう一つの特徴は4曲入りのCD『2012 e.p.』以前までずっと全曲英語歌詞だったということです。英語で歌っていた理由はヴォーカル&ギターの荒井さんの声にうまく乗る日本語が思いつかないためだったそうです。
the band apartの英語歌詞に関する裏話
英語の歌詞を書いていた際の作詞はヴォーカル&ギターの荒井岳史さんとドラムスの小暮栄一さんです。小暮栄一さんが唯一英語をマスターしているのですが、高校の時父の仕事の都合で1年間カナダに住んでいたそうです。当時小暮さんは海外に行くことを断固反対したそうですが、力及ばずカナダへ。その時付き合っていた彼女とも別れてしまったと悔しそうに語っていました。しかし、得るもの多し。チェリーボーイだった小暮さんは帰国後、男になっていたようです。
まあそんなこんなで英語が得意な小暮さん。基本的には曲はメンバーみんなで作るという体制をとっていましたが、歌詞は7~8割型小暮さんだったそうです。近年はメンバーの友人であるジョージ・ボッドマン(TURTLE ISLAND)が、文法・表現・発音などの面においてアドバイザーを務めており、ジョージは一部の楽曲で作詞も手がけているそうです。といいつつ、メンバーの皆様も英語はどんどん上達しているそうで、仲のよいアメリカのバンドmock orangeのメンバーもインタビューの中で認めています。ちなみに英語の歌詞ですが、内容は日常生活を散文的に切り取ったような描写や少年期への想いを歌ったものが中心です。
the band apartが日本語で歌い始めた理由
the band apartが日本語で歌うようになったのは上でも紹介しましたが『2012 e.p.』が最初。といってもその後出ているCDは2013年にリリースされた6thアルバム「街の14景」。日本語の歌詞に変えた理由ですが、一つは震災があったこと。もう一つは当時ベースの原さんが体調不良で休んでいた時に、ヴォーカルとパーカッションだけでアコースティックライブを行っていたそう。その時に元々あったバンドの曲を日本語でカヴァーしたのが大きかったと語っています。洋楽と邦楽を聞いて分かる通り、それぞれの言語にあうメロディというものがあります。元々英語で歌っていたthe band apartですが、日本語がのってもおかしくないようなメロディを作っていたそうです。全てとはいきませんが、大半は日本語に変えてもこれまでのバンアパの雰囲気とは変わらない曲に仕上がっています。歌詞が日本語になってからはこれまで歌詞を書いていなかった原さんと川崎さんも歌詞を書くようになり、表現という意味ではまた新たなバンアパが見られます。総じて、日本語歌詞に転向した根底の理由は「日本語でやることが楽しくて、今の自分たちの趣向にフィットしているから」だそう。メロディ自体が変わってしまわないことはファンにとっても嬉しいことでしょう。最後に小暮さんのコメントを掲載します。
「とは言っても、まだまだ遊べる余地がいろいろあると思います。しばらくは日本語で試していきたいですね」
the band apart、バンド結成秘話
バンド結成の流れですが、ボーカル&ギターの荒井さん意外はみな中学生の頃からの友達です。荒井さんは高校の時に原さんとの共通の友人を介して知り合ったそう。元々原さんはギターをやっていたので、ギターの話で盛り上がり仲間に加わったそうです。しかし、荒井さんが入った時は一度音楽性の不一致から小暮さんが脱退しています。メタルが嫌いだったらしいですね。the band apartという名前で活動し始めたのは1998年頃。バンド名はクエンティン・タランティーノの映画プロダクション、「A Band Apart」が由来。またバンアパ自分たちが立ち上げたレーベルを拠点に活動しています。2001年の1stアルバムをリリース後レーベルを立ち上げました。その後の人気は順調。毎回リリースするアルバムはオリコンで10位以内に入っていますし、実力で認められている数少ないバンドなのではないでしょうか。そしてメンバー仲が良く、「バンドをしたから仲が良くなったんじゃなくて、仲の良い奴等でバンドをやっている」「音楽は4人が仲良くなるための手段ともいえる」「解散しても友達のままでいられる」と語っています。そんなthe band apartは4ピースバンドでは珍しく、ヴォーカルが中心には立ちません。これはメンバーの「誰かがメインとかではなく、4人が同列の関係に見えるといい」という思いが反映されたものらしいです。
the band apart原さんの名言
キャラ的にもthe band apartの要(カナメ)になっている原さんの名言を紹介したいと思います。(※ちなみに原さんとそのお友達は涼宮ハルヒの憂鬱の主題歌「最強パレパレード」を聞くと踊りだすそうです。笑)そしてメンバーの川崎さんと小暮さんはライブ中、原さんの顔を見ると絶対に笑ってしまうため見ないようにしているとか。
- デブは一回冷えると冷えっぱなし
- モテねーうやつが注目を集める為にはウソのラブ話か霊感つえーってゆーしかないじゃないっすか
- 扇風機はデブの命をつなぐライフライン
- 音楽的には自分たちが感動できるものをやりたいし、精神的にはこの4人の絆を強めるためにバンドがあるっていう考え方
- インタビュアー「いつもよりキャッチーな感じがしますね?」原「ファックユー!!!」
- 汗の向こう側からそちらを見てますよ
- こんだけ人がいると地獄に見える。・・・ありがたい。
- 俺のことはいいけどさ、荒井のことは悪く言うなよ
- 自分が世界で一番カッケェ音楽をやってるって自己満足したい。それをしたいがために俺はバンドを始めた。
- 人生最大のギャグって出馬だよね?
- 汗かいたデブが立ってるだけで面白いでしょ?
ついでに書いておきますが、原さんは中学時代見事なまでにキレイなセンター分けだったらしく、ジェルを毎回1本使ってその髪型を形成していたそうです。ネタ持ち過ぎですね。(笑)そんな原さんですが、本気で名言を言うとむちゃくちゃかっこいいです。
「恐れを抱いて生きるものは、人生を半分しか楽しめない。」
the band apartのライブで2マンが多い理由
ツアーやライブが中心でそういう現場で力を発揮するバンドというのは基本的にメディアにはあまりでません。the band apartもそんなバンドで、今でもそのスタイルは変わっていません。その証拠に認知度は上げていますが、ほとんどテレビには出ていませんよね。メディアのマーケティングを使わず広まるのは実力がある証拠。日本ではやはりメディアをつかわなければそれほど深く浸透し、誰もが知っているというレベルにはなりえませんが、海外ではそうではありません。メジャーかマイナーかはあまり関係なく、実力重視。the band apartは2007年に一度盟友のMOCK ORANGEと共に初のアメリカツアーを敢行していますが、その人気はとてつもなかったと言われています。実力は完全に折紙付きですね。そしてthe band apartのライブ形態の多くはほとんど全て2マン。その理由は長くライブをやりたいという気持ちから。そしてガチンコだという証拠。さらに仲の良いバンドと集中して旅ができて楽しいからだといいます。他に乗っからない自分たちだけの実力でここまできたというその心構えがカッコいいです。
まとめ
the band apartのメンバーの話になるとやはり前に出てくるのは原さん。やはりその風貌から存在感は大きいです。しかし、メンバーそれぞれキャラクターはあります。ヴォーカルの荒井さんは185cmの長身と元ラガーマンの屈強な肉体。そして複雑なコードのカッティングやオブリガート的なフレーズも、歌いながら弾きこなすスキル。そしてギターの川崎さんは速弾きや特殊奏法を取り入れたテクニカルなプレイが特徴でそのスキルは海外でもかなり評判。そしてスニーカーマニア。さらにドラムスの小暮さんはリズムパターンの引き出しが多く、ディスコライクな四つ打ち、フュージョン風の16ビート、ラテンリズムなど幅広く叩きこなす。そして英語と絵が得意でCDジャケットのデザインやDVD ブックレットのデザインなども手がけている。(・・・原さんは実は幼少時代にクラシック好きの父からピアノやバイオリンを習わされておりクラシックが好きだったりとか)。何はともあれメンバーそれぞれの持っているスキルは高く、音楽としてもとても完成度の高い(ヲタクも飽きさせないくらいの)曲を世に出している稀なバンドです。英語がデキることも音楽においてはスキルの一つとなるのではないでしょうか?英語と日本語では生まれるメロディが違うと言いますし、思考も異なってきますからね。
TOEIC講師:石崎力也